乳歯の特異性について 宮内 満喜雄
むし歯は歯の表面の穴開けから始まり、内部に進んでいきますが、永久歯と乳歯では進み方も症状も違います。
永久歯の場合は冷たい物がしみる、違和感を感じるなど、いろいろな症状が出て早く気付きますが、
乳歯の場合は自覚症状が永久歯ほど明確ではありません。
乳歯のむし歯の進行はとても早いので、親の気付かないうちに象牙質まで達する大きな穴になって、その下の歯の神経まで進行してしまうことがあります。
神経にまでむし歯が及ぶとやっかいな治療をせざるを得なくなりますから、定期的に歯科医院を訪れて、早期発見につとめ、神経まで触らなくてよい治療で済ませられるようにしていきたいものですね。
子供の歯について 浅原 隆史
今回、子供の歯についてお話したいと思います。
小児歯科では、3ヶ月程度に1度の定期健診などのチェックが必要とされています。
乳歯は、虫歯の罹患率も高く、偏食や甘いものを多く食べる傾向があり、つめたものが取れたり、新しい虫歯の発生がとても起こりやすいとされています。
また、自覚症状が少ないために虫歯が大きくなりやすく、永久歯に影響がでるともされています。
ですから、単に乳歯の虫歯と思わず、フッ素塗布、シーラント等の予防処置なども含めて、
子供達の歯に関心を持って、子供達の小さなサインを見逃さないで下さい。
むし歯菌の母子感染 嶋谷 雅博
虫歯の原因となるミュータンス菌は、2歳から4歳頃に主に母親(保育者)から感染することが明らかにされています。
子供の口の中に入ったミュータンス菌は、もともといる常在菌と生えてきた歯の表面(エナメル質)の住みかをめぐって争います。
もしこの戦いに常在菌が勝てば以後むし歯になりにくくなります。
どちらかが勝つかは母親から入ってくるミュータンス菌の量に関係しますので、母親がむし歯の治療をしておくことも大切です。
ミュータンス菌が定着した場合も必ずむし歯になるというわけではありません。
菌数を少なくする事が大切です。
そのために定期健診と予防処置がより重要なものとなります。
6歳臼歯のムシ歯予防 宮内 満喜雄
小学生になる頃には、6歳臼歯と呼ばれる大人の歯がはえてきます。
この歯は大人の歯の中で最も大きく、噛む力も強く、噛み合わせの基本となるとても大切な歯です。
はえ始めの頃は、乳歯と比べて少し低い位置にあり、歯の表面が複雑な形をしていることから、歯ブラシをちゃんとあてるのがとても難しくなっています。
そこで、この歯のムシ歯予防法として「シーラント」と呼ばれる方法があります。
それは、歯の表面の汚れを除去した後、プラスチックのうすい膜を張り、歯に汚れをつきにくくする方法です。
この「シーラント」はムシ歯予防の有効な方法の一つですが、日常の歯磨きなどのムシ歯予防法との併用がとても重要です。
むし歯予防は離乳期から 古田 巖
全身的な健康を考えた生活をしていれば、歯の健康にも誠に好都合です。現代の食事内容は一般的に甘く軟らかいが、今の時代にこそ全身の健康を考えた食生活がなされていると、むし歯予防が達成されます。好き嫌いなく何でも食べられる味覚形成は離乳食から始まるので、「好ましい献立であれば食べてもらえる」のではなく、「食べられる味覚形成が達成されていない」から食べられないのです。
何でも好き嫌いなく食べられるようにするには、離乳食のときから、繰り返し食べさせれば良く、これを邪魔する「甘い味を覚える」ことは後回しすれば成功します。甘党にしてしまうと、野菜嫌いになります。
子供の虫歯はお母さんから 大矢啓史
赤ちゃんの口の中は、出産時無菌の状態です。甘いものを食べても虫歯になりません。
ところが、何らかの原因で、家族などから、ミュータンス菌(虫歯菌)に感染し、虫歯になってしまいます。
お子さんには、お母さんが一度口で噛み砕いた食物を与えたり、同じ箸を使ったりなど、しない様に注意してあげてください。
またお母さんも、できるだけ早く、虫歯の治療をすませて、唾液中のミュータンス菌の数を減らすのが肝心です。
唾液によって感染が起こるからです。虫歯の多いお母さんのお子さんは、虫歯が多くなる傾向があるようです。
3才頃から、フッ素塗付など虫歯予防するのも効果的だと思います。
生まれたての歯は未完成 岸本 高尚
春は健診の時期ですね。虫歯を指摘された方はもちろん、そうでない方も一度お子さんの歯をごらん下さい。
奥歯の溝はどんな形か、汚れが溜っていないか、確認してください。
乳歯も永久歯も生えたばかりのときは未完成です。
口の中に見える部分は出来ているようでも、歯の根は短いのです。
また、歯の頭の部分は石灰化が不十分な上に、奥歯には複雑な溝があるため虫歯になりやすいのです。
対策としては、歯の石灰化を向上させるフッ素歯面塗布、歯面の複雑な溝を埋めるシーラント処置などがあります。
未完成の歯が成長するには時間がかかります。虫歯を作らないためには、目配りが必要なのです。
永久歯代行乳歯 杉本 左知子
「この子仕上げ磨き、してあげてますか?」と私。
「上の子の時は一生懸命したんですが、下の子は・・・すみません」。私に謝られてもねえ。
心当たりのある方は、今晩じっくりと子どもたちの口の中を見てみましょう。
乳歯は、前歯から奥歯まで順にABCDEと呼ばれ、左右対称なので上下20本の歯が並んでいます。
「永久歯に生え変わるんだから乳歯のむし歯くらい」なんて、もしかして思っている方へ、ドキッとする事をお教えしましょう。
永久歯は、先天的に欠如する事があります。乳歯を一生、大切に使わなくてはならない事もあるのです。
特に、AとCとEにはご用心。
エナメル質について 中西 透
エナメル質は胎児6週間頃から作られます。
体の中では最も硬い組織であり、実験的には約200年使用に耐える程です。
しかし、欠点として硬くてもろいという特徴があります。
色調は白色半透明ですが、これは加齢とともに褐色がかってきます。
このエナメル質はエナメル小柱という物質と、これを埋める物質との集合体であり、1つの細胞で1つのエナメル小柱が作られます。
その数は前歯では約850万個の細胞からなります。
また化学的組成は、95%以上のリン酸カルシウムを主体とした、ハイドロキシアパタイトの結晶構造となり、残りは有機物質と水分です。
このエナメル質の形成は、胎児期から始まり、12〜16才頃まで行われます。
以上の事から、エナメル質は多くの細胞によって形成されているので、出産前から16才頃まではバランスのとれた食事を摂取するようにして下さい。
頑張れ、お母さん!! 杉本 左知子
「この子、歯磨きが嫌いでさせないんです。どうしましょう?」
日常診療で低年齢児を診ることの多い私が、よく受ける質問です。
あの年代の決まり文句「イヤ!」、「ジブン!」に負けず、根気よく毎日、寝る前に磨いてあげることが大切です。躾の一環です。
大人でも逃げ出したくなる歯科診療に、子どもたちは必死に抵抗します。考えてみて下さい。
愛情を持った親に押さえつけられ、歯を磨かれるのと、診療台の上で怖い思いをするのと、どっちがいいでしょうか。
「おやすみ」と私。
「あ、歯みがいてないで」、と我が家の3歳児(3男坊)。
「ゴメンゴメン、君も進歩しましたねえ」。
歯とカルシウム 嶋谷 雅博
カルシウムは丈夫な歯や骨を作るために欠かせないミネラルです。
しかし、日本人の多くが摂取不足というのが現状です。
成長期の子供や妊婦・授乳期の女性は多くのカルシウムを必要とします。
カルシウムやタンパク質だけをたくさん摂っても歯や骨に届きません。
腸での吸収を高めるのにビタミンDが必要ですし、太陽に当たること、運動すること(骨に刺激を与えること)も影響します。
インスタント食品や清涼飲料水に含まれる食品添加物(リン)はカルシウムの吸収を妨げます。
結局のところ栄養バランスのよい食事と適度な運動が大切と言えるでしょう。
甘食(間食)の回数を減らそう 小寺 修
子供の年齢によって虫歯のできる歯が違います。できやすい歯から重点的に予防するのが効果的です。
歯科医院に行けば、虫歯のできやすい歯や原因の除き方を教えてくれます。
原因は砂糖と虫歯菌が歯にかかわっている時間です。
一回の摂取量ではなく、一日に何回摂取するかが問題なのです。
たとえば、午前中にチョコ、3時に饅頭、夕食後にアイス、風呂上りにジュースを飲むのなら、一回にまとめて食べてしまいましょう。
飴や買い置きの砂糖入り飲み物は摂取回数が増えるので危険です。キシリトール100%のガムや牛乳、果物はOK。おやつは捕食です。
栄養のバランスも考えて夕食まで腹持ちする量を。
エナメル質と象牙質について 中西 透
体は約60兆の細胞で構成され、6歳臼歯のエナメル質だけでも約1,300万個の細胞で形成されています。
エナメル質は爪、皮を作る細胞と同じものが石灰化し、体の中で一番硬い組織になります。
小さな虫歯でも数十万個〜数百万個を失うことになり、二度と再生されません。象牙質は生きています。
少し大きな虫歯を削ると痛みが出るのはそのためです。
また、歯が形成されるころは乳歯が胎生時6〜7週ごろに始まり、
胎生4ヶ月ごろにエナメル質、象牙質が作られていき、永久歯は出生時ごろから作られます。
妊娠時にはバランスの良い食事と歯の衛生、初期治療を心がけましょう。
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